庭園日誌をご覧のみなさま、こんにちは。

新人スタッフの【わかば】です。初めての記事ですので拙い部分もあるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでいただければと思います!

突然ですが、「心が落ち着く庭園」に欠かせないものといえば、何を思い浮かべますか? 日本庭園の4大要素とは、「水、石、植栽、景物」であると言われていますが、その中でも私の心が一番落ち着くのは、ずばり「石」の存在です。

貴船石景石と敷石

そこで今回は、京都が誇る「石」についてご紹介しようと思います。

庭園の石

庭園にとって石は、様々な役割を果たしています。景石として組まれた石は、その選び方や配置によって全体の印象を大きく変えることもあります。

庭園の石の活用

ほかにも、それぞれの石の特性を生かしてベンチや滝が作られたり、石垣や敷石としても活用されます。

庭園の敷石と景石

石の存在が庭の魅力を支配しているといってもいいくらい、重要な存在というわけですね。

京都が誇る「貴船石」

実は京都には、全国に誇る石がたくさんあります。そのなかでも、鴨川上流の貴船付近で採れる「貴船石」と呼ばれる石は庭石として最高級品と言われており、非常に貴重な石です。

貴船石

京都最高質の銘石と呼ばれる「加茂七石」の一つに数えられているだけあって、何とも言えない迫力がありますね。

この貴船石ですが、近年は新たに産出されることはほとんどなくなってしまいました。そこで、奈良の吉野川で採れる「吉野石」という石が貴船石と非常によく似ているため、代用品として広く使われるようになりました。

吉野石

京都の貴船石と奈良の吉野石。どちらの石も暗い色で、荘厳な見た目をしていますが、写真では貴船石がすこし青みがかっているのに対して、吉野石は赤っぽい色をしていますね。

そこで今回は、近畿地方の岩石の分布から、この2つの石を詳しく比べてみます!

貴船石と吉野石の共通点

貴船石吉野石の写真をもう一度見てみましょう。

貴船石
吉野石

目を凝らしてよく見ると、どちらも表面に艶々とした光沢がありますね。これは、この2つの石は火山由来の火成岩であることをあらわしています。

もっと詳しく言うと、これは火成岩のうち、マグマが急冷されてできた火山岩に分類される、玄武岩という種類の岩石です。つまり、どちらも火山が噴火して地表に出てきたマグマが固まってできた岩石ということがわかります。

火山岩のでき方

京都の鴨川と、奈良の吉野川。遠く離れたところで同じような石が見つかったのですが、実はこの2つの石には決定的な違いがあったのです。

貴船石は大先輩?

下の絵は、鴨川と吉野川付近にどんな岩石が分布しているかを色で塗って示している地図です。地学の世界では「地質図」と呼ばれます。

関西全域の地質図
鴨川上流部の地質図
吉野川付近の地質図

鴨川上流と吉野川で、同じ黄緑色が塗られていることが見て取れますね。この色は玄武岩の分布を表しているのですが、詳細を見てみるとそれぞれの形成年代は、

貴船石・・・「石炭紀~ペルム紀」

吉野石・・・「後期ジュラ紀~後期白亜紀」

とされています。「石炭紀~ペルム紀」とは、約3億年前の時代の名前です。一方で、「後期ジュラ紀~後期白亜紀」とは、約1億年前の時代の名前です。

つまり、貴船石が生まれてから吉野石が生まれるまで、1億年も時間が経っていたということです。

貴船石は3億歳で、吉野石はまだ1億歳。吉野石からすると、貴船石は大先輩なんですね。

3億年ってどれくらい昔なの?

貴船石が3億年前にできたという事が分かりましたが、ところで、私たちが今住んでいる日本列島がいつできたのかご存知ですか?

選択肢を3つ挙げるので、直感で選んでみてください!

  1. 15億年前
  2. 1億5,000万年前
  3. 1,500万年前

どれも想像がつかないほど昔ですね。(笑)

正解はCの「1,500万年前」です。

実は日本列島は、かつてユーラシア大陸の一部でした。1,500万年前ごろから徐々にユーラシア大陸の東の端がはがされて、日本海を拡大させながら日本列島が出来上がったのです。

日本列島の成り立ち

1,500万年前と聞いて、「思ったよりも若いなあ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そうです。実は貴船石も吉野石も、日本列島よりずっと年上なのです。

1,500万年前まで、日本列島がまだユーラシア大陸にくっついていたころには、とっくにこれらの石は出来上がっていました。

貴船石は、大陸を駆け巡るティラノサウルスやトリケラトプスを生で見て、

数万年の氷河期を何回も経験して、

やっと日本列島に運ばれて、

京都の鴨川の地で名石として脚光を浴びているのです。

私たちには想像もできないような果てしない冒険を経て、今日も庭石は静かに佇んでいる。そう考えると、周りの石の見え方が変わってきませんか?

まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございます。

一見するとほとんど同じ石のように見える貴船石と吉野石ですが、貴船石の方が2億年も先輩の石だということがわかりました。

同じ岩石でも、マグマが冷え固まる速さが違ったり、石ができてから風や雨で表面が削られたりするとまったく違う顔を見せてくれることがあります。

普段あまり意識して観察することのない石にも目を向けて、彼らの辿ってきた歴史に想いを馳せるのも楽しいですね。

日本には他にも数多くの名石があるので、それらについても研究して情報発信していきたいと思います!



↓お庭のお手入れ・改修・設計などに関するご相談はこちらから↓
-------------------------------------------
株式会社大幸造園
TEL 075-701-5631
FAX 075-723-5717
HP http://daiko-zoen.com/
-------------------------------------------