庭園日誌をご覧のみなさま、こんにちは。

スタッフの【はやし】です。



今回は、常緑針葉樹(コニファー)の剪定と枯れやすさの理由を紹介致します。


複数の科をまたいだ常緑の針葉樹林全般を指して、コニファーと呼ぶことがあります。そのため、コニファーはそれぞれの形や葉の色が様々です。

christmas tree detail

葉の形がまるで針のようですね。

このような葉を持つ針葉樹全般をコニファーといいます。

便宜上、ここでは常緑針葉樹をコニファーと呼んでご紹介していきますね!

コニファーと聞いて皆様はなにを思いつきますか?

私は真っ先にこれを思いつきました。

christmas tree

そう、クリスマスツリーです。

クリスマスツリーにはモミのほか、トガサワラ、ウラジロモミ、ゴールドクレストなど様々なコニファーが使われます。



どうしてクリスマスツリーにはコニファーなの?


photo-1604853605187-612da98eb36d
クリスマスツリーに使われる木として親しまれるモミは、マツ科モミ属の常緑針葉樹(コニファー)です。北半球の寒冷地から温帯にかけて約40種が分布しているといわれ、日本でも自生している植物です。それにしても、なぜクリスマスツリーにはコニファーなのか。そのルーツは意外にもその常緑という特質にあります。
古代ゲルマン人は北欧の、寒さの厳しい環境下に暮らしていました。そのため寒い中でも常に緑の葉をつけているコニファーは「永遠の命の象徴」として、特別な存在だったそうです。また中世ドイツでは、モミの木には小人が宿るとされており、花や食べ物を飾り付けると小人たちが集まってきて、人々に力を与えてくれると信じられていたのだとか。このようにパワフルなコニファーに対する信仰の精神が、クリスマスツリーのルーツだといわれているのだそうです!ちなみに、北欧やイギリスにはモミ類は自生していないため、入手しやすいドイツトウヒが使われることが多いのだそう。


コニファーはどんな性質?


photo-1588189840566-8642df9205bc


コニファーの原産地は主に「北米、温帯北部~冷帯までの世界中」だといわれ、全世界に500以上の種類があるそうです。その原産地から分かる通り寒い地域に向いていることから、日当たりの悪い場所でも育てやすいという性質があります。しかし寒さには強い反面、暑さには弱い傾向があるのも事実です。

そんな針葉樹は、強い剪定を一度に行うと枯れやすい性質があります。

そのため、剪定はめったな理由では行わない方がいいとされています。

しかしなぜ、剪定したら枯れやすいのでしょうか?


枯れやすい理由とは!


waldsterben-60275_960_720


そもそも、植物は強い剪定を行うと大きな負担がかかり、枯れやすくなります。強剪定では太い枝や多くの枝葉を根元から切るため、切り口が大きくなるからです。しかしコニファーの場合、それ以上にもう一つ、通常の剪定においても枯れやすい理由があります。


それは、葉の無い場所から新たに葉が出にくいという特徴があるからです。


常緑樹・落葉樹ともに、ほとんどの広葉樹は新たに葉が生えてくるため、枝や葉を切っても枯れません。

しかし針葉樹は枝先に葉がないと、新しく葉が再生することなく枯れてしまいます


つまり、葉の生えていない場所まで剪定してしまうと、新しい葉が出てくることはないということです。

特に、木の横幅を小さくし過ぎてしまうとそれ以上葉が出てこなくなって枯れやすいとされています。そのため、剪定の際は葉を残すように切らなければならないのです。


それでは、どうして葉の無い場所から新たに葉が出にくいのでしょうか。



実は、針葉樹の葉の出にくさには不定芽のできやすさが関係しています。
皆さんはピクニックやハイキングなどで、このような切り株の状態を見たことがありますか?
photo-1605474321797-3b02fa702976

その中には下の写真のように、切り株からヒコバエが出ている場合も見たことがあるのではないでしょうか。
photo-1443948308135-d57fc66de368

ヒコバエは「胴吹き」とも呼ばれ、その現象は萌芽更新と言われます。


萌芽枝には定芽による場合と不定芽による場合があります。その中でも、多くは休眠芽という定芽によります。定芽の内には、枝と葉柄の間にある腋芽という芽があり、なんと樹木の葉の数だけ腋芽があるといわれています。
上図は広葉樹の切り株で、脇芽からヒコバエが生えてきていますが、なんと針葉樹であるコニファーはヒコバエが生えにくいのだそうです。

このように、針葉樹の場合一般的に萌芽からの成長が難しいことが知られています。(※チリマツやセコイアは例外だそうですが。)

特にトウヒ属やモミ属の針葉樹ではすべての葉に腋芽があるわけではなく、ヒノキ科の樹木にははっきりした腋芽が認められないそうです。また、中にはヒバやスギのように必要な時に初めて腋芽をつけるものもあるのだそう。


つまり、ヒコバエの生えにくいコニファーはそもそも不定芽や定芽をつけにくいという事が分かります。
そのため、そもそも芽が附属しているものである葉が生えていない枝を切ると必ずその枝は枯れてしまうのです。


まとめると、


広葉樹:萌芽力が強く不定芽ができやすいため、太い枝でも切ることが可能。

針葉樹:不定芽ができにくいため、葉の無い枝は枯れてしまう。



という事ができます。


幹や枝に葉があって初めて、針葉樹の幹や枝は生きています。一般に樹は、幹に葉が無い場合別の部分に芽を出して葉を作りますが、それができないと幹は枯れてしまうのです。剪定は切る位置を必ず考えて切るようにしたいですね。

剪定には注意が必要ですが、剪定をしなければコニファーは健康に育ちません。
ここで、具体的な剪定の時期ややり方を知りたいところですね。



金属製ハサミで切ると葉が茶色くなるってほんと?

gardening_sentei_hasami
     よく、コニファーを金属製のハサミで剪定すると葉が茶色に変色するということを耳にします。
特定のハサミで色が変わる、なんてこと本当にあるのでしょうか?
結論から言うと、ハサミで切ることでコニファー全体が茶色くなるのは事実です。しかし、実は「金属製ハサミ」が直接の原因ではありません。コニファーの葉には節があり、節の先を切るとその「節」が枯れます。ハサミで全体の先を切ると節が枯れるため、株全体が茶色くなってしまうのです。逆に、手摘みをするならば節から摘み取ることができるので、比較的茶色くなりにくいといわれます。
つまり、「金属のハサミを使うこと」自体が悪いのではなくて、節の先を切り落として節を枯らすことが良くないのですね。ただ、全体を手摘みで処理するのは大変な作業です。都合によってはハサミでの剪定も取り入れましょう。


コニファーの剪定時期は春先!



一般に庭木の剪定は毎年行うものです。大体1年に2回を目安に切るとされています。
通常夏に「軽剪定」と呼ばれる、軽く不要枝を取り除く程度の剪定を、
冬に「強剪定」と呼ばれる、植物を短く大幅に刈り込んでいく剪定を行います。


剪定の種類


プレゼンテーション2

〇夏の剪定
・春から伸びすぎた枝や込みすぎた枝を
取り除き、樹冠の乱れを整える
〇冬の剪定
・本来の樹形を形づくるための剪定
・樹木の骨格、枝の配置を整える



冬に大胆な剪定をするのは、樹木が「休眠期」に入っているからです。
休眠期に枝を切っておくと、生長期に入ったときに樹木が元の状態へ戻ろうとするため枝の伸びが良くなります。
また、休眠中に作業すると樹木への負担を抑えることができ、生育への影響も軽減できるようになります。また、枝の切り口から病原菌などが入る可能性も低くなるんです。

アートボード 1

ただし、コニファーをクリスマスツリーとして楽しみたいなら、シーズンとなる冬の剪定はできません。
一般的な庭木は基本剪定を冬に行いますが、コニファーの剪定時期は3〜4月、

つまり春先に強剪定をするのがベストなんです!


しかし、冬に剪定できないからといって夏に作業することだけは避けましょう
コニファーは暑さに弱いため、特に弱っているときには切り口から傷んでしまうことがあるのです!
コニファーの軽剪定を行うなら、暑い時期が終わり、休眠に入る9~10月頃がよいでしょう。



コニファーの主要な剪定時期は。それならば、他の樹木も同じなのでしょうか?
いえいえ、実は同じ樹木でも剪定に適している時期は全然違うんです!
ついでにご紹介しておきますね。



時期の違い



常緑針葉樹

常緑針葉樹を剪定する場合、3月から5月にかけて行います。

この時期は新芽を成長させる力があるため、枝を切っても回復することができます!

例:

名称未設定 3

常緑広葉樹

常緑広葉樹は広がった葉を一年中つける樹木です。剪定には、3月から6月にかけてが適しています。

常緑針葉樹と同じように、生長期の前に剪定をしておきます。

例:

名称未設定 4

落葉広葉樹

落葉広葉樹は、冬に葉を落とす広葉樹です。12月から2月にかけてが剪定に最適だとされています。

この時期は休眠期に当たるため、枝を切ってもダメージが少ないんです。冬は葉が落ちるので、剪定の際見やすいのもポイント。

例:

名称未設定 5


ずばり、樹木の強い剪定は特に以下の時期を大事にしたいですね!



常緑樹:早春の芽吹き前

落葉樹:晩秋から冬にかけての生育休止期



※樹木の種類によって剪定時期が異なるので、きちんとサイクルを理解していないと木を枯らしてしまう原因に…! 気を付けましょう。



常緑針葉樹の剪定、その大きな注意点とは!


米アイダホ大学のホームページ記事には、針葉樹の高さを調節する際、主要な幹を切断して上部を完全に切り落としてしまうことについて特に注意が呼びかけられています。もちろん、主要な幹を切り落とすことで重要な切断面が空気にさらされることになり、病気の感染などによって木全体が枯れてしまうという危険性は大きいですよね。しかし、それ以上に記事には注意点が2点強調されています。一つは、残された枝の形が不格好になるということ。また、もう一つは木が周辺環境や木自身に悪影響を及ぼすことが喚起されています。
また、ワシントン州立大学の庭園「WSU スカジット・マスター・ガーデナーズ・ディスカバリー・ガーデン」でコーディネーターを務めたジェーン・ビリングハーストさんはこのことについて、
中心の幹がそのまま伸びるわけではないため剪定の効率が下がること・切断部からの腐朽が広がることによりまわりの枝が緩くなって周辺に危険をもたらすことを呼びかけています。
樹高を維持するのに、なんと彼女は木の上の部分全体を主幹から切り落とすという方法に代わる剪定方法を3つ紹介しているんです。

3つの剪定方法

スライド1 (2)


  1. 一つ目は、木全体の枝の間を部分的に切り落としていく方法です。この方法では左右非対称な見かけになりますが、上部の主幹を切り落とさなくて済みます。

  2. 二つ目は、一つ目と同様木の間を所々切り落としていく方法です。多少スカスカに見えますが、全体の形を保ったまま剪定できます。

  3. 三つ目は、幹の最下部の枝から切り落としていく方法です。こうすることにより、形を崩さず木全体のボリュームを減らすことができます。


※ただし、これらは日本のお庭にはすこし不向きかもしれませんね!



針葉樹の特徴により、一度切ったらなかなか芽が出にくいコニファー。
それでも、春先に気を付けて切ればある程度健康的に保てるんですね。
剪定には繊細な注意が必要ですが、注意して切っていけば難しいことはないのです!


長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
コニファーは謎の多い植物でもあります。
次回以降も、コニファーの謎についてもっともっとご紹介していきますね!
少しでも、皆さんのお庭の知識を広めるお役に立てていたら幸いです。







<参考・引用>

ACORN編集部 ACORN 「クリスマスツリーは、なぜモミの木? モミの木やトナカイと人間との関わり」2018年12月18日
http://acorn.okamura.co.jp/topics/column/2018/12/18/mominoki/

Bert Cregg. “How to Prune Conifers These plants are unforgiving, so make the right cuts for the right reasons” Fine Gardening Issue 126.
https://www.finegardening.com/article/how-to-prune-conifers

D.W. McConnell, R.L. Mahoney, W.M. Colt, A. D. Partridge. How To Prune Coniferous Evergreen Trees. Bulletin No. 644. University of Idaho College of Agriculture Cooperative Extension System, 1985.

Green Snap「コニファーの剪定 時期や丸い樹形にする方法は?茶色く枯れるのは剪定のせい?」2021年7月5日
https://greensnap.jp/article/9081

HORTI by Green Snap 「コニファーの種類と図鑑|もみの木やクリスマスツリーのような木も?」 2015年9月14日 (2019年11月26日 更新)
https://horti.jp/5654

IN NATURAL STYLE 「常緑のコニファー!剪定時期はいつがいいの?」2019年1月14日 (2019年6月13日 更新)
https://www.in-natural.style/green-dictionary/conifer/

Jane Billinghurst. Alternatives to Tree Topping. Washington State University Extension.
https://s3.wp.wsu.edu/uploads/sites/2073/2014/03/092507.pdf


石井 亘 「緑化樹の剪定方法(基礎講座)」 『第2回緑化技術研修会(9/29)』 地方独立行政法人 大阪府立 環境農林水産総合研究所 
http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/kankyo/info/doc/2020093000020/file_contents/kennsyusiryou_sentei.pdf

一般社団法人 日本植物生理学会「みんなのひろば」「樹木がヒコバエを発生させる条件について」 2017年8月8日
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3844

一般社団法人 日本植物生理学会「みんなのひろば」「胴吹き・ひこばえについて」 2019年8月26日
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4508&key=%E9%87%9D%E8%91%89%E6%A8%B9&target=full

ガーデニング花図鑑 「コニファーを金属のハサミで切ると切り口が茶色になる?」
https://sodatekata.net/flowers/page/2321.html

庭木の剪定ドットコム 「針葉樹(コニファー系)の剪定ワンポイントアドバイス」
https://www.niwaki-sentei.com/docs/jiki/abc-031/

北海道立林業試験場 緑化樹センター 「庭木の剪定~枝の切り方のポイント~」 『グリーンメール No.6』 北海道立林業試験場 緑化樹センター 2002








↓お庭のお手入れ・改修・設計などに関するご相談はこちらから↓

-------------------------------------------

株式会社大幸造園

TEL 075-701-5631

FAX 075-723-5717

HP http://daiko-zoen.com/

-------------------------------------------