庭園日誌をご覧のみなさま、こんにちは。
スタッフの【はやし】です。
🚩今回は、テーマ上閲覧注意の写真がとても多くなっています。虫が苦手な方はご注意下さい!
鳥が毛虫を食べています。
これはツツドリの毛虫の捕食を撮ったものです。
イガイガして毒があるものもいる毛虫ですが、食べても平気なのでしょうか。
今回は、毛虫とそれを食べる鳥たちについて掘り下げていこうと思います!
身の周りにはどんな毛虫がいるの?
私たちの身の回りには、思っているよりもいろいろな種類の毛虫がいます。
その中には、毒を持っているものも多くいるということはご存知でしたか?
この場をお借りして、毒を持つ毛虫たち・毒をもたない毛虫たちをそれぞれご紹介しようと思います。
こんな毛虫を見たら注意!毒のある毛虫
例えば、サザンカやツバキといった住宅の垣根によく使われる植物にはこんな毛虫たちが潜んでいます。
※チャドクガ
※ドクガのイラスト
ドクガやチャドクガの毛虫は集団でついていることが多く、その毛に毒をもっています。刺されるとかぶれなどのひどい症状をひき起こすので要注意です。また、毒のある毛は折れやすく、飛んできた毛によって被害にあうこともあるのです!
また、カキの木などにはよくこういう毛虫がいます。
イラガは、通称「電気虫」とも呼ばれ、見た目の色は綺麗ですが、触るとかぶれたり、激痛が収まらなかったりと大変な症状を引き起こします!
イラガの天敵!美しい寄生蜂、イラガイツツバセイボウ
日本のセイボウ科には4亜科16属49種が記録されています。そもそも、セイボウとは漢字で「青蜂」と書き、青い蜂という名前です。英語ではその見た目から “jewel wasps” (宝石蜂)と呼ばれます。また、別名で “cuckoo wasps”(カッコウ蜂)とも呼ばれるそうです。
実はこの蜂は寄生蜂で、カッコウが他の鳥の巣に卵を産みつけるように、ジカバチ・トックリバチ・ドロバチ・ルリジガバチといった他の蜂の巣に卵を産み付けます。そして幼虫はその宿主の中で育つのです。
このセイボウの中でも、イラガに寄生することで知られるセイボウがいます。イラガイツツバセイボウと呼ばれるこのセイボウはよく梨などの果樹園にいるのが見られ、イラガの繭の中にいる幼虫に寄生します。その際イラガイツツバセイボウはイラガの幼虫を食べて成長するため、イラガの強敵なのです。
触っても平気(?)毒の無い毛虫たち
また、もちろん毒の無い毛虫もいます。こちらもいくつかご紹介しますね。
例えば、春の道路を横切っていくこういう毛虫を見たことありませんか?
これはヒトリガの仲間である、シロヒトリの幼虫です。
また、サクラの木にはこんな毛虫もいます。
これはモンクロシャチホコの幼虫で、シャチホコのように体を振ることがよく知られています。
これらの毛虫たちは毒を持たないので、基本的には手にのせても問題ありません。
(※肌の疾患がある方やアレルギー体質の方などは、刺激を感じたりかぶれたりすることがあるので注意が必要です!)
毛虫を食べる!?鳥たち
こんなに毛が生えていて、それに毒があるものもいる毛虫ですが、鳥たちは平然と食べてしまいます。
例えばスズメやシジュウカラ、ヤマガラやコゲラなどの身近な鳥も毛虫をよく食べることで知られています。
時々毛虫を食べることはあっても、普段はドクガやチャドクガを食べることはあまりないのだそう。というのも、なんと鳥たちはかぶれない毛虫を選んで食べているのだそうです!
日本の生物学者で鳥類学者である上田恵介先生は、そんな鳥が毛虫を食べているところを観察しています。
例えば、スズメは毛のあるマイマイガをくちばしでつつき、地面にたたきつけてぐちゃぐちゃにしてから内臓だけ食べていたのだそうです。毛があるせいで、丸のみにはできないようですね。
しかし、鳥がすべてスズメのように毛を避けて食べるのかというと、そうでもありません。
鳥の中でもカッコウやホトトギスなどは、特に毛虫を好みます。なんと、毛虫がたくさん集まっているところに現れて、毛虫を何十匹も丸のみにするのだそうです。また、毒のあるドクガやチャドクガも丸のみにしてしまう強者なのです!
毛虫が大好物!カッコウ、ホトトギス、ツツドリ
さて、カッコウやホトトギスはもちろんツツドリも毛虫には目がありません。まずはカッコウからご紹介します。
カッコウ。
カッコウは、日本では夏鳥として九州よりも北の地域に飛来します。
カッコウの名前はオスの鳴き声が「カッコウ」と言っているように聞こえるというのが由来とされています。足がとても小さいのも特徴の一つです。餌は主に大きな毛虫、小さな無脊椎動物なのだそう。
(トリビア)カッコウのメスは自分で巣を作る事はなく、オナガやモズ、オオヨシキリといった鳥の巣に一個の卵を預けてしまいます。また、元々あった宿主の卵を捨てたり、食べたりする事もあるのだとか!
また、同じ毛虫好きな鳥としてホトトギスがいます。
体はカッコウよりも小さいですが、そっくりですね!
ホトトギス。
ホトトギスは日本では九州より北の地域で繁殖し、夏の季節の到来を告げる代表的な渡り鳥とされています。
(トリビア)カッコウと同じように他の鳥の巣に卵を預ける習性があります。ウグイスの巣に卵を産むことが多いので、ウグイスが生息する場所に渡来します。またホトトギスは、昔から春のウグイスとならんで人びとに親しまれてきました。なんと『万葉集』にもその鳴き声の記載があるのだそう。
『遠野物語』に記載された、カッコウとホトトギスの逸話
カッコウとホトトギスは、姿こそ似てはいますが実は鳴き声が全く異なります。
カッコウは「カッコウ、カッコウ」と鳴くのに対し、ホトトギスは「キョッキョッ、キョキョキョキョ」と鳴くことで知られています。柳田国男が1910年に発表した、岩手県の遠野地方に伝わる逸話や伝承を記した説話集である『遠野物語』には、そんな二羽の鳴き方の違いがよくわかる逸話が残されているのです。ここにご紹介しますね。
昔、ある姉妹が暮らしていました。いつも姉は芋を焼き、まわりの堅い外側は自分が食べ、柔らかい内側の部分を妹に食べさせていました。しかし妹は、姉が自分よりも美味しいところをもらっていると思いこみ、姉を包丁で殺してしまいました。姉はカッコウに変身し、「ガンコ、ガンコ(堅いところ、という方言)」と鳴いて飛び去っていきました。妹はその後自分の過ちを知って、後悔しました。彼女はホトトギスとなり、「包丁欠けた 包丁欠けた」と鳴きます。遠野(現在の岩手県遠野市の辺り)では、今もホトトギスのことを「包丁かけ」と呼んでいるそうです。 《53話より》
2羽に引き続き、ツツドリのご紹介をします。ツツドリもカッコウによく似た鳥で、遠目からでは区別ができないほどです。

ツツドリ。
ツツドリは、特に毛虫で毒を持たないモンクロシャチホコの幼虫が好物だといわれています。しかし、毒のあるイラガの幼虫の捕食も観察されています。ツツドリはカッコウ科の鳥ですが、夏鳥として、他のカッコウ科の鳥よりも早く渡来するのが特徴です。一見カッコウやホトトギスとまったく見分けがつきませんよね。
毛虫が好きだからと言って、これらの鳥たちに毛虫の毛が刺さらないというわけではありません。
カッコウやホトトギスを解剖して胃の中を調べると、胃の壁に毛虫の毛が沢山突き刺さっているのだそうです。考えただけでも痛そうですね…。
どうしてそうまでしてカッコウの仲間は毛虫を好んで食べるのでしょうか?それは研究している先生方にもいまだに理由が分からないそうです。本当に不思議ですよね。
今のところは、
一般的に鳥たちは毛や毒を避けるために毛虫を丸のみにはしたくないけれど、中には毛虫が好きな鳥もいる
という見解が主流のようです。
しかし、有害な毛虫を避ける鳥たちは、どうやって食べるものを判別しているのでしょう。
判別方法は詳しくわかっていないのですが、
毒のある毛虫や、消化できなかったものを吐き出すことができる
ということは確認できています。
鳥は毛虫を吐き出す?
鳥は毒を持った毛虫などを口にしたとき、くちばしで判断することはありません。彼らは飲み込んでいる途中で異変を感じ、反射的に吐き出す性質を持っているのだそう。
そして驚くべきことに、その虫の模様や色を覚えて二度と食べなくなるのです!
すごい学習能力ですよね。
どうやら、鳥のこういう性質が虫の警戒色や擬態を進化させる力にもなっているようですよ。
鳥はこうして食べている途中に毛虫を吐き出すことはもちろん、消化できなかったものを吐き出すという能力も持っています。
鳥の消化の仕組みやものを吐き出す方法も、ついでにご紹介しましょう。
鳥の胃は二つある!消化の仕組みとペリット
さて、ほとんどの鳥には歯が生えていませんが、彼らはどのようにして咀嚼し、消化するのでしょう。
鳥は基本的にそのくちばしを咀嚼や消化に使うことはありません。
その代わり、鳥はなんと胃を二つ持っているのです。
鶏の消化器の模式図。
社団法人 畜産技術協会 消費者向けリーフレット 「生産と消費をつなぐ身近な畜産技術」 より。詳しくは下のリンクをチェック↓
http://jlta.lin.gr.jp/publish/midika/pdf/mijika15.pdf
1つ目は腺胃(前胃)と呼ばれます。
特徴:胃の壁は柔らかく、消化酵素を出す腺をもちます。
→ここで消化された食べ物は2つ目の胃に運ばれます。
2つ目は筋胃(後胃・部位としては「砂肝」と呼ばれるところ)と呼ばれる胃です。
特徴:いわゆる歯の役割を果たし、収縮することで食べ物をすりつぶします。また、中が厚い筋肉の壁で囲まれ、表面はざらざらとしています。
→大体の鳥はここに砂や小石を含み、食べ物を砕くのを助けています。
鳥は、上に紹介したような消化の過程で消化しきれなかったものを塊にして吐き出すことができるのです。
野鳥を観察される方などは、鳥が突然何かを吐き出す姿に遭遇したことがあるかもしれません。
謎の塊、ペリット
鳥の胃で消化されなかった骨や鱗、獣毛や羽毛、昆虫の外皮や足、植物の種などのものは、一つにまとめられて口から吐き出されます。
これを「ペリット」といって、鳥が食べ物を食べてから約10時間前後で吐き戻すのだそうです。
この「ペリット」は、特にタカ・フクロウ・モズ・カモメ・カワセミ・カラスなどがよく出すことで知られています。
ちなみにペリットを吐くことは、
- 消化を早めて体重を軽くする
- 食道を掃除して綺麗にする
役目があると言われているんです。

ペリットには、捕食した動物のヒゲや歯、骨や爪がたくさん入っているんです。
フクロウなどのいる木の下などにはよくペリットが落ちていることがあり、分解するとネズミなどの骨がたくさん見つかるのだとか…。
※詳しい写真などは「鳥って不思議4 ペリット」 京都市動物園 救護センターブログ をチェック!↓
身近な植物についている毛虫と、雄大な自然の中でさまざまな虫を食べて飛び回る鳥たち。
毛虫が大好きな鳥たちもいれば、避ける鳥たちもいて不思議ですね。
食べ物を食べるということ一つにも鳥たちの知恵や体の仕組みが関わっていてとても興味深いですね!🕊🕊🕊
長くなりましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
<参考・引用>
Bird Research 『プロジェクト紹介』「季節前線ウォッチ-鳥の初認と初鳴き調査-」
https://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/index_kisetsu_taisho.html
Bun-ichi Nature Web Magazine 『あるある昆虫相談室 おしえて!虫のおじさん』「第2回いもむし・けむしの疑問Q&A」2018年5月23日
https://buna.info/runningstory/900/
doli Note「胃で食べ物を砕く?!反芻する種類も?!鳥の胃について獣医学生が解説」2019年12月21日掲載, 2020年8月26日更新
https://dolikyou.com/%E8%83%83%E3%81%A7%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9%E3%82%92%E7%A0%95%E3%81%8F%EF%BC%9F%EF%BC%81%E5%8F%8D%E8%8A%BB%E3%81%99%E3%82%8B%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%82%82%EF%BC%9F%EF%BC%81%E9%B3%A5%E3%81%AE%E8%83%83/
NHK 『読むらじる。』 「鳥はどうして毛虫を食べられるの?」 子供科学電話相談 2021年1月10日放送
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/kodomoq/vlJQzaWAdU.html
Sike, Tamas and Rozsa, Lajos, authors. “Owl pellet avoidance in yellow-necked mice Apodemus flavicollis and house mice Mus musculus.” Acta zoologica Academiae Scientiarum Hungaricae. 52(1), 2006, pp.77-80.
https://www.researchgate.net/publication/215688072_Owl_pellet_avoidance_in_yellow-necked_mice_Apodemus_flavicollis_and_house_mice_Mus_musculus
金沢動物園 「身近なムシのくらし」2016年7月26日
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/kanazawa/details/post-61.php
京都市動物園 救護センターブログ 「鳥って不思議4 ペリット」2020年4月12日
http://www5.city.kyoto.jp/zoo/enjoy/blog/rescue-blog/20200412-39064.html
国立市 『国立の緑環境』「モンクロシャチホコについて」2016年7月1日
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/about/about1/sizen/midori/1465447614706.html
公益社団法人全国私立保育連盟 『あおむし通信』 「その3 ケムシの話」
https://www.zenshihoren.or.jp/hotsuu/web/living2018/vol03.html
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 『森林生物情報』「森林生物 モンクロシャチホコ」
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/seibut/bcg/bcg00236.html
『自然のチカラ~昆虫や野生生物、植物の不思議』 「イラガの天敵って?」 2017年9月20日掲載, 2018年4月25日更新
https://animalbattles.wealthyblogs.com/?p=9791
清水伸彦, 姉崎智子.「胃石を持つ鳥・持たない鳥」群馬県立自然史博物館
http://www.gmnh.pref.gunma.jp/wp-content/uploads/report2020_2-24.pdf
スモールズー 「セイボウ(青蜂)図鑑」2019年8月2日掲載, 2021年6月15日更新
https://smallzoo.net/seibou-zukan-shurui
新潟県 『県民生活・環境部 愛鳥センター紫雲寺さえずりの里』「展示鳥類剥製(ツツドリ)」2019年6月29日
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/aicho/tutudori.html
平塚市博物館 「野鳥の観察(4.食べる)」 『ガイドブック14 野鳥の観察』 平成7年3月発行
https://hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/seibutsu/00000059/79.html
柳田国男 『遠野物語』 青空文庫
https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html
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