庭園日誌をご覧のみなさま、こんにちは。
スタッフの【はやし】です。
寒さも徐々に緩み、そろそろサクラの季節となりました!🌸🌸🌸
楽しみにされている方も多いかと思います。
サクラの木々は毎年美しい花をつけて私たちを楽しませてくれます。
しかし、そんな花々の下に広がる世界に目を向ける方は多くないのではないのでしょうか。
サクラは一体どんな土の上に育っているのでしょう。また、育ちにくい土壌環境ってなんなのでしょうか?
これを機会に、今一度その生態にズームインしてみましょう。
サクラについて
サクラは原産地を日本・中国・朝鮮半島・ヨーロッパ・北米にもち、バラ科・サクラ属に分類されます。
多くの方がご存知の通り、一般的には3月~4月に白・薄桃色・濃い桃色などの花を咲かせます(※品種によっては9月〜12月と2〜3月の2度にわたって咲くものも)。
花弁の色の違いももちろん、サクラは種類によって一重や八重など花びらの重なり具合が異なるのが特徴です。
種類としては、自生している山桜だけでも15種類ほどあります。品種改良されたサクラはなんと300品種以上もあるのだとか!
そんなサクラは環境に敏感で、毛虫にもさらされやすい植物です。テング巣病にも侵されやすいため、その点で注意が必要になってきます。
成育に向いている場所
では具体的に、サクラに適した土壌環境を見ていきましょう。
はじめにまとめてご紹介すると、サクラに向いている場所の条件には
①水はけがよい ②地面が適度に柔らかい ③土の養分が多い
ということがあげられます。
これには、サクラにとっての2つの好みが関わっています。
①日当りを好む
日当たりと風通しの悪い場所では育ちにくいため、日がよく当り、まわりに障害がない場所が向いています。加えて、植える間隔が狭い場合・建築物や他の木との距離が短い場合は病害虫も発生しやすいので注意が必要です。

②水はけと養分を好む
水はけがよく適度に湿気があり、養分の豊富な土地が向いています。水捌けが悪い・地面が固い・養分が少ない場所では育ちにくく、病害虫の餌食にもなりやすいのです…!

土壌環境のNG例
サクラは土壌に対する反応が敏感で、生育状況が土壌環境に左右されやすいといわれています。サクラに向かない場所は先ほどご紹介した環境とは真逆。
①水はけが悪い ②地面が固い ③土の養分が少ない
サクラを植える土壌に関してこれらを満たさないように気を付けるため、それぞれ具体的に理由を見ておきましょう。
①水はけが悪い場所

雨が上がった翌日も溜まった水が残るような湿った場所は、水分が過剰にたまって根が腐敗してしまいます。特にサクラの根は一晩水につかると、死んでしまって青酸ガスを発するそう。
一方で、サクラの成長にはたくさんの雨水が必要です。そのため、サクラを支える土壌は降った雨がずっととどまることなく、素早く地中に沁み込んでいく場所であることが大事なのです。
山の斜面や土手にサクラが多く植えられているのはそのためなんですね。
②地面が固い場所

踏み固められたりして地面が固い場所では根が伸びることが出来ません。
また、サクラにとって根の周りの地面を踏み固められるのは迷惑でもあります。地下の浅い部分には細い細根が網の目状に広がっていて、その先端の根毛が水や養分を吸収しているのです。この細い根はとても弱くて切れやすいため、敏感なのです。
③土の養分が少ない場所

地面は柔らかいのに生えている草が黄色っぽい・あまり伸びていない場所は土の養分が不足しています。このような土地ではどうしても十分に栄養を吸収できず育ちにくくなります。
さらにこれらの条件に加え、マサ土の場所には植えないように気を付けなければいけません。
マサ土

マサ(真砂)土は、花崗岩が風化して出来た土です。マサ土の短所として知っておいていただきたいのは、
①水持ちがわるい・②肥料持ちがわるい
ということ。養分が少なく、乾燥しやすいという性質があるため、一度踏み固められると硬く・水はけが悪くなりやすいのがネックです。
でも、マサ土はきちんと土壌改良すれば桜が育つ場所になるんです。
真砂土の短所を補うために
①粘土分をもった土壌を補う。
少しコツが要りますが、粘土を入れて混ぜていきます。
(しかし、粘土は乾けば非常に固く、水を含むとねばねばとして伸びるだけ。現実的にはあまり混ざりません。)
②有機物を入れ、堆肥で栄養を蓄える力を補う。
(しかし、有機物を加えても分解が早く腐植が生成しにくいため、継続的に投入する必要があります。)
※その他の対策としては、植栽時根元にマルチングを施す・盛土や排水処理をすることが一般的だそう。

意外と目を止めたことのなかった満開の花の下の世界。今年はどんな土の上にサクラが育っているのか注目してみるのも面白いかもしれません。
コラム: ソメイヨシノはクローン?
日本のサクラを代表する品種と言えば、なんといってもソメイヨシノですよね。川辺や校庭で誰しも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
そんなソメイヨシノは、実はたった一本のオリジナルのいわばクローンなのだそう。
その起源は江戸時代後期に遡ります。オリジナルは、ある江戸郊外染井村の植木屋さんが「オオシマザクラ(大島桜)」と「エドヒガン(江戸彼岸)」とを交配して育てた一本のサクラでした。
このサクラ、実はこの時点ではまだソメイヨシノという名前ではありません。植木屋さんたちは桜の名所である奈良県の吉野山にあやかって、「吉野桜(ヨシノザクラ)」と呼んでいました。
このサクラは葉がほとんどなく、美しい花を見るにはうってつけだったため、大変な人気でした。
しかし、サクラには「自家不和合性」という性質があり、ソメイヨシノどうしでは交配して増やすことができません。また、他のサクラと交配してしまうとソメイヨシノの優れた特徴をそのまま受け継ぐことは不可能です。
そのため植木屋さんたちはソメイヨシノのクローンを増やすことにしたのです。
クローンと言っても、実際には挿し木や接ぎ木といった作業でソメイヨシノを増やしていきます。盆栽などで挿し木・接ぎ木を経験したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
挿し木や接ぎ木を行うと遺伝子が同じものが育つので、いわばクローンというわけです。
それぞれの木が同じ遺伝子を持っているため、ソメイヨシノは同じ環境の下で一斉に開花し、一斉に散っていきます。
私たちが所々で目にする美しい桜の木々は、ある意味それぞれが同一人物だということもできるのかも…?!
長くなりましたが、
最後に、
もしお庭の樹木のことで
お悩みがありましたら
ぜひご相談下さい!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
<参考・引用>
「桜の樹木学」 近田文弘 技術評論社 2016年
日本花の会 「苗木の植え方・育て方マニュアル」
https://www.hananokai.or.jp/wp/wp-content/themes/hananokai/images/sakura/sakura-plant/1-9.pdf
日 英二・永松義博 「土壌物理性がサクラ類の樹形に与える影響」
https://www.nankyudai.ac.jp/library/pdf/39A39-45.pdf
LOVEGREEN 「桜(サクラ)の花言葉|種類、特徴、色別の花言葉」
https://lovegreen.net/languageofflower/p21506/
https://www.sakuranokai.or.jp/chishiki/
森林・林業学習館 「日本の春の象徴「桜」」
https://www.shinrin-ringyou.com/topics/sakura.php
日本文化研究ブログ 「ソメイヨシノの起源と歴史、名前の意味とは?特徴や寿命は?」
https://jpnculture.net/someiyoshino/
豊田グリーンソイル 「真砂土の特徴と土壌改良」
https://www.toyota-greensoil.com/2018/11/01/%E7%9C%9F%E7%A0%82%E5%9C%9F%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%A8%E5%9C%9F%E5%A3%8C%E6%94%B9%E8%89%AF/
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