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庭園日誌をご覧の皆様、こんにちは!

スタッフの【はやし】です。



秋の雰囲気漂う季節となりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
これからはバードウォッチングにも最適な気候になってきそうですね~🕊
ということで今回は、身近な京都市での観察事例をもとに、鳥たちの暮らす環境について考えてみたいと思います!





私たちの住む街にはどんな鳥がいる?



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実際に私たちの周りにはどのような種類の、どのような鳥たちがいて、どんな環境に住んでいるのでしょう?
観察では、京都市市街地は周囲の樹林地と比べるとたくさん鳥がいるわけではないということが分かっています。

しかし同時に、大阪の中心部では見られないエナガやイカルなどの鳥類が観測された事例が多いのです。このように比較的鳥が住みやすい環境であるという原因は、市街地内の緑の多さにあるのだと言われています。特に、樹林性鳥類と呼ばれる森林地に住む鳥たちが生きるのに緑の環境は欠かせないので、京都には樹林性鳥類が多く生活しています。
一方で、草原性鳥類と呼ばれる草原地にすむ鳥たちはあまり見られません。千葉市の市街地ではたびたび確認されている草原性鳥類ですが、周囲を山地で囲まれて建築物の高さが規制されている京都市の特徴を反映した結果生息が少なくなっているのではないかと言われています。



以下の表では、それぞれ繁殖期に観測された鳥と越冬期に観測された鳥を数の多い順に示しています。
①繁殖期に観測された数の多い順







1位スズメ
2位ツバメ
3位ハシブトガラス
4位ドバト
5位ムクドリ

②越冬期に観測された数の多い順





1位ヒヨドリ
2位ハシブトガラス
3位ドバト
4位ムクドリ



繁殖期にはスズメやツバメなどが多くなっているのに対して越冬期にはヒヨドリが多くなるなど、鳥たちの移り変わりが楽しい表ですね。また、京都市に多いのは主にカラスハトだということが分かります。最近は繁殖期、越冬期ともにイソヒヨドリも多く観測されているそうです。自然環境が少なくなることで、普段は都市部に暮らさない鳥たちも増えてきているのですね。



森林に住んでいるのはどんな鳥?



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さて、先ほどご紹介した「樹林性鳥類」「草原性鳥類」ですが、どのような鳥たちがそれぞれに当てはまるのでしょうか?身近な鳥たちを例に挙げるので、近所でみたことがあるかどうか、皆さんも一緒に思い出してみてください!



まずは樹林性鳥類から。このグループにはコゲラ・シジュウカラ・ヤマガラ・ウグイス・エナガ・メジロ・ツグミ・イカルなどが含まれます。
その中でも、今回は住んでいる環境が一目で分かる食性の観点からエナガ・イカルをご紹介。

エナガ

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食性
小さな虫・虫の卵・小さな果実などを食べる。
・アブラムシ
・シャクトリムシ
・シジュウカラなど他の鳥が食べた後の種の残骸
・ムラサキシキブの実
・柔らかい柿
・樹液(カエデの木)
・牛や豚の脂身

イカル

食性
木の実や植物の種子を食べ、ケヤキなどにも集まる。
・サクラの実など

彼らのような樹林性鳥類は京都市市街地で局地的に生息している、というのが実態のようです。特にエナガやイカルなどは小規模な緑地では観測されておらず、比較的大規模な自然環境が必要な様子。ほかにも、キビタキ・シロハラはいのちの森の外では確認されておらず、琵琶湖疏水でもキビタキ・アカゲラは確認されていないなど、京都御苑やいのちの森から外側への積極的な鳥類の移動はされていないというのが現実です。
彼らの居場所を守るには、彼らの食べるものを確保するため実をつける樹木を守ることや、他の鳥類・昆虫類の多くいる生物多様性を確保してあげることがとても大切です。



草原に住んでいるのはどんな鳥?



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草原性鳥類にはセッカ・ホオジロ・ヒバリなどが含まれます。
今回は食性の観点からヒバリとホオジロをご紹介。


ヒバリ

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雑食性で、地面ではクモや昆虫、他にもアワやヒエなど野生に生える穀類を食べる。

ホオジロ

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成鳥は地面に落ちたイネ科植物などの実・種子を食べる。繁殖期には昆虫などを捕食。雛も昆虫類を食べる。


彼らのような草原性鳥類は樹林性鳥類に比べて特に生息に関して危機に瀕しています。その要因は何と言っても近年における草原の減少といえます。例えば、北海道札幌市でも自然草原はわずか2%しかないと言われているんです。草原減少の理由には多々考えられることがありますが、直接的には平坦地で人間が利用しやすいため残らなかったということが言えます。また、草原の重要性や機能の認知度が低いのも現状でしょう。
草原の生産量は実は森林よりも高く、二酸化炭素の吸収量も多いと言われています。私たちが草原の重要性に気づかないというのはとてももったいないことですよね。


このような経緯で草原よりも森林の保護・保全が勧められている現在、レッドデータブックの中で草原性鳥類の全種数のうちの割合は森林性鳥類と比べて2倍以上にもなってしまっています。

* POINT

草原性鳥類であるヒバリが生息できる環境は年々減り、世界的に生息数が減少しています。原因は田畑の住宅地化ですが、欧米では大規模栽培による生活環境の多様性が失われているのも原因と考えられています。ヒバリは現在東京都の一部で絶滅危惧Ⅱ種、福島県・山口県・東京の西多摩で準絶滅危惧、千葉県で一般保護動物に登録されています。


「草原性の鳥は生態系ピラミッドでも下の方に位置し、本来、多数いなくてはなりませんが、その数の減少は、猛禽類の減少よりも深刻です。」(「草原の野鳥たち」より)
鳥類生態学を専門とする研究者はこう語ります。


これからは、樹林地だけでなく都市緑地に草原空間を作ることも非常に大切なのです!
※草原環境をどう作るかについては、過去のブログを覗いてみてください♪






<参考・引用>

高林裕 福井亘 山口史絵 「京都市市街地のマトリクスに出現する鳥類の種組成および樹林性鳥類の出現傾向」『ランドスケープ研究』2021 年 14 巻 p. 57-63
動物.JP 「エナガ」
動物.JP 「ヒバリ」
目に見えるいきもの図鑑
岩手県林業技術センター「樹木園だより」
太田川河川事務所
「草原の野鳥たち」札幌コンベンションセンター 平成16年度通常総会





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