
庭園日誌をご覧の皆様、こんにちは!
スタッフの【はやし】です。
ミミズはその小さな体で広大な土壌を保ってくれています。今回は、そんな縁の下の力持ち、ミミズのもたらす利点とミミズコンポストについてご紹介します!
土壌の働き者!ミミズの生態とは
土壌の働き者ミミズ
皆さんは、普段土壌を支えている生物たちのことを考えたことはありますか?
その中でも、私たちの身近に存在する小さな働き者、ミミズは土壌を豊かにするのに大きな貢献をしているんですよ!
『広い面積にある表土の全部がミミズの体を数年ごとに通過し、またこれからも通過するというのは、考えてみれば驚くべきことである。・・・人間が存在するずっと以前から、大地は実はミミズによって規則正しく耕されていたし、また今もなお耕され続けている。この・・・生き物ほど、世界の歴史に重要な役割を果たしてきた動物が、他にも多くいるかどうかは疑問である。』
(チャールズ・ダーウィン『ミミズと土』渡辺弘之訳 平凡社 1994 より抜粋)
「進化論」の提唱者、チャールズ・ダーウィンはこう言っています。その言い回しからもミミズの土壌への貢献度の大きさは計り知れません。
ミミズは具体的に、以下の4つの過程を経て土壌に貢献しているといわれています。
- 食べる:有機物とエサの分解
- 糞をする・粘液(尿)を出す:肥料供給や殺菌作用
- 動き回る:土を耕し、肥料や菌を根のそばに移動
- 死亡する:即効性肥料として土に還る

また、ミミズ自身も土壌にとっては利点の多い以下のような特徴を持っています。
- 土壌処理量・移動距離が大きい
(耕されて良質な土が出来る。) - 薬物に強い
- 病原菌を食べる
- 糞が保水効果を持つ
(糞の成分は堆肥として抜群。)
ミミズは、まさに土壌の働き者であると言えますね。
ミミズの生態
アリやムカデ等と同じ大型の土壌生物であるミミズの生態は、意外にも複雑で繊細なものです。
ミミズたちは
の条件が揃わないと生息ができないのです。それぞれについて、どうしてミミズに適切なのでしょう。
- 湿度
ミミズは、体の75%~90%が水分で出来ているため、体が濡れていないと生きられません。研究結果では、ミミズを突然乾燥に曝すと体重が数十%以上も急激に減少することが分かっています。
- 空気
かといって、酸素が少ないのも命取りに。呼吸の条件には、酸素がそろわなければいけないのです。 雨が降った後、ミミズが地面にはい出ているのをみたことがある方は多いと思います。その理由は、土が水分を吸収し過ぎたことによる空気不足でミミズが呼吸困難になっているからだとされているんです。研究結果では、ツリミミズ類は通気している条件のみ、水の中で長期間生きることができます。また、フトミミズ類は全く通気しないと2時間の水漬けで死んでしまうということです。
- 暗所
ミミズは環境変化や光等の刺激に敏感で、自然環境では常緑樹の環境を好みます。研究結果では、ミミズは落葉樹や草本の植生地では冬に葉が落ちて光にさらされるために生存しにくく、常緑樹の植生地では葉が落ちることがないため冬でも生存しやすいということがわかっています。
- エサ
ミミズを含む土壌生物全般は、落葉後フェノール物質(フェノール・リグニン・タンニン、針葉樹林の葉に多く含まれる)がある程度少ない状態の有機物(葉)を好むことが知られています。落葉直後はフェノール物質が多く、土壌生物が利用しにくいため、有機物(葉)が一年中ある常緑樹などの周りに土壌生物が多い傾向にあります。
ミミズコンポストとは?

ミミズの種類は以下の3つに分かれており、ミミズコンポストで働くミミズはその中でも落葉層で生活し、落ち葉や堆肥を食べる表層性種に属しています。
- 表層性種
- 表層採食地中性種
- 地中性種
※それぞれの種類の中でも違いがあり、大きさまで違ってくるのだそうです。
表層性種のミミズは主にコンポストミミズまたはシマミミズと呼ばれ、現在大きな注目を集めています!
生ゴミを一番効率的にコンポストするのはシマミミズで、表層性種の中でも特に有機物の多い所でしか生きられないのだそう。シマミミズの生ゴミ処理能力は、体重の半分の1kg~2kg程度なのだとか!
表層性種とそれ以外の違い
一例として、コンポストミミズと、フトミミズ科(日本のミミズの80%)のうち土壌生息型の種(表層採食地中性種+地中性種)との違いをご紹介。
コンポストミミズ | 土壌生息型ミミズ | |
---|---|---|
外見 | 5~10㎝・細い | 10㎝~・太い |
巣作り | しない | する |
繁殖力 | 高 | 中~高 |
表からわかる通り、コンポストに使われるミミズはそれ以外と比べて、体は小さいけれど繁殖力は高い、という傾向にあるようです。
ミミズコンポストとは何なのでしょう?具体的に説明していきます。
そもそも「コンポスト」とは、有機物を微生物の働きで分解させて堆肥にする処理方法、またはその堆肥のことをいいます。
ミミズコンポストは、
なんです。
「コンポスト」は、英語で堆肥を意味する "Compost" が由来となっています。
なんと!ミミズは一日に自分の体重と同じ量(もしくはそれ以上)の生ゴミ(落葉)を食べるのだそうです。
コンポストのサイクルは、
↓
②食べた後に栄養たっぷりの糞を排出
という流れで行われます。
ミミズの糞にはたくさんの土壌微生物がいて、作物の成長を助けたり、土の中の栄養分を作物の根が吸収しやすいように調整したりします。そして、痩せた土を肥沃な土に蘇らせてくれるのです!ミミズの糞はそれ以外にも、病原菌が含まれない(お腹の中で病原菌が消化されている)・農業でのトラブルが起きない(糞は無機化していて、根焼け・窒素飢餓を起こさない)というように、利点が多いんです✨
ミミズコンポストは、私たち現代人にとって他にもたくさんのメリットがあります!

- 無公害で省エネ。(電力不使用)
- 子供たちも安心して使用できる。(機械を一切使わない)
- 臭いが出ない。(団粒構造をもつ糞は炭と同等の吸着能力がある上、土壌微生物が臭いを分解する)
- 1年間で1台につき最大3,692㎏の二酸化炭素の削減に。(1年間で1台につき最大95,718円の税金も節約)
※NPO法人 環境再生機構調べ。
ミミズコンポストを作るには?

便利でメリットだらけのミミズコンポスト。おうちに一台ほしい!という方も出てきたのではないでしょうか。
実際にミミズコンポストを作るにはどんな環境を整えたらいいのか見ていきましょう。
- 温度
15℃から25℃の温度(シマミミズ):最もよくエサを食べ、最も早く生ごみを処理する。
- 湿度
土はミミズの体と同程度(75%)の水分を保つ:ミミズは皮膚で呼吸するため、湿気が必要。 - 酸性度
特にシマミミズには、やや酸性の状態が適している。 - 換気
箱の中の空気が循環しやすいようにする:ミミズは水分と同様、酸素を必要とする。 - コンポストの詰め物の種類
セルロース:腐った落ち葉(自然界での生息場所)・動物の糞(自然界での生息場所・栄養素多い・良質のミミズの糞ができる)・木片(清潔・無臭・空気が多い環境を作る・再利用可)
- 補充するもの
炭酸カルシウム:土が強い酸性になるのを防ぎ、ミミズの生存と繁殖に必要なカルシウムを補充する(粉末の石灰石・卵の殻を砕いたものも代用となる)。
★「消石灰」や「水和石灰」は使用しない!
ミミズコンポストはヨーロッパやオーストラリアで特に普及が進んでおり、ミミズコンポストジャパンでも紹介されているキャノワームという会社は家庭用のミミズコンポスト容器で有名です。
ミミズコンポストの外観や、詳しい機能を知りたい方は以下のリンクをチェックしてみてくださいね!↓
<参考・引用>
武内伸夫「ミミズの浸透調節」
市川隆子・高橋輝昌・小林達明「ミミズ個体数と植生および土壌環境との関係」
宮崎あかね 「大型土壌生物(ミミズ)による土壌浄化の可能性」
宮崎県環境森林部環境森林課 みやざきの環境「今の暮らし/4.土のはたらき(残飯とプラスチック)」
NPO法人環境再生機構(2018)「地球温暖化防止&循環型社会の形成 地域で家庭生ごみ減量化に向けてミミズゴミコンポストの普及啓発」
株式会社 農業経営研究所 「シマミミズ基礎知識」
ミミズコンポスト管理局「ミミコンのススメ」
ミミズコンポストJAPAN「キャノワーム」
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株式会社大幸造園
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